火照った身体をプールサイドで夜風に曝して、僕はずっと言葉を捜していた。
香織を手放す…
それは僕にとって心を失うことに等しい。
『別れよう』なんて、そんな簡単な言葉で終わらせられるほど軽い気持ちじゃない。
何を失っても、彼女だけは失いたくは無かった。
一族を敵に回して苦しむのが僕だけであるのなら、一生苦しむ事だって厭わない。
だけど、香織に危害が及ぶ事だけは二度と避けたかった。
別れることで彼女の安全が保障されるなら…
僕はこの決断を後悔はしない…
春日のおじい様の残酷さは僕の見解を超えている。
邪魔者は容赦なく消すと黒い噂は聞いていたが、香織はまだ高校生で一族を脅かすような存在ではない。
別れろと脅される程度の事はあっても、女性にとってもっとも屈辱的な方法で、しかも一生苦しむ形で心身ともに拘束し僕から遠ざけようなどという、非人間的な手段は考えも及ばなかった。
彼女の一生など何の価値も無いかのように闇に葬ろうとした。
許せない…



