香織と病院から帰ったのは、20時過ぎだった。
出かけるときは、こんな時間にこんな気持ちで帰ることになるとは、思ってもみなかった。
今朝は香織がホテルへ尋ねてくることを楽しみにして、心は浮き立っていた。
いつも以上に仕事もやる気を出していたのに…。
何故…こんなことになったんだろう。
疲労を滲ませる香織に少しでも身体を解(ほぐ)してもらおうと、母屋で母が用意しておいた風呂をゆっくりと使うように勧めて、僕は自室のシャワーを浴びた。
どんなに熱い湯を浴びても、心が凍りつくような恐怖はまだ拭えない。
僕でさえこの状態なのだから、香織の精神的苦痛を考えると心が引き裂かれるようだった。



