【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~

その影響は仕事にまで見事に反映された。

まるで周囲の期待に応えるかのようなタイミングで、幾つかの案が採用され、プロジェクトの幹部にまで押し上げられることになったのは、彼女に毎朝勉強を教えていた頃だ。

毎朝、ほんの僅かの時間、彼女に勉強を教えるあの時間が、僕にとってはかけがえの無いものとなっていた。

そんなに前から、ずっと僕を支えてくれたのが香織の笑顔だった事を彼女はまだ知らない。

だってずっと片想いで、密かに香織をそんな風に見ていたなんて、何だかストーカーみたいで今更言い難いじゃないか?

だけど、彼女がそこにいて、その笑顔を僕に向けてくれるだけで、どれだけでも強くなれるのは揺ぎ無い事実だ。

彼女と付き合い始めてからの僕は、周囲が驚くほどの頭角を表した。

学校では相変わらずの僕だけど、仕事では見違えるように積極的になった。

これまでは周囲に押されるような形で取り繕っていた場を、自ら率先して動き、纏め上げていくまでに成長した。