【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~

「廉!香織ちゃんは無事かっ?」

緊迫した表情で駆け寄ってくる父さんの姿に、別荘にも警備会社から連絡が入った事を悟った。

それまで気付かなかったが、救急車のサイレンの音もかなり近づいているのが聞き取れる。

直ぐに警察も来て、倒れている男達は捕まるだろう。

「賑やかになってきたようだな。後は頼んだぞ」

ヘルメットを被りながらそれだけ言うと、彼は振り返りもせずにエンジンを吹かした。

小さくなっていく彼を見送る僕の背後で父さんが「彼は?」と尋ねてくる。

どう説明したものかと言葉を捜していると、少し後ろで母さんが放心していることに気付いた。

香織の余りにも痛々しい姿に驚いたのだろう。

彼女は無事だと告げるため、母さんに近づいた時―…

突然、母さんの瞳から大粒の涙が零れ落ちた。