【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~

「あいつらは全部俺が倒したんだ。
彼女が目覚めたら訊いてみるといい。
…大体恋人だというなら、もっとシッカリ彼女を護ってやれ。
俺があと少し遅かったら、彼女はどうなっていたと思う?」

奴らが香織にしようとした事を、彼の口から告げられ、血が凍る思いだった。

それが本当なら、確かにあと数分でも彼が遅かったら、香織は心にも身体にも深い傷を負っていた。

いや、それだけじゃない。

一生脅しを受けながら恐怖に脅えて生きていくことになったかもしれないのだ。

「俺の彼女が昨日、あいつらに鞄を引ったくられたんだよ。
大切なものが入っていたから、取り戻す為に今朝から奴らを探していんだ。
見覚えのある車を数キロ先で見つけて、ここまで後を追って来たんだが…。
もしも、昨日俺達が奴らに関わることが無かったら…」

腕に抱いた香織を痛ましげに見つめ言葉を濁した彼を、これ以上疑うつもりは無かった。

僕は、自分の無力さを痛感するばかりで、彼に何も言う事が出来なかった。