【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~

別荘まであと少しの場所に差し掛かると、道路際に数台の車やバイクが無造作に停まっていた。

これより上は高級別荘地で、特定の人間しか行くことが無く、日中でもめったに車の通りもない。

これだけの車やバイクが道を塞ぐように停車していても、この近辺の住人は事件に数時間は気付かないかもしれない。

あの安田さんの緊急連絡がなかったらと思うとゾッとする。

離れたところに車を停め、心配する運転手を待たせて独りで駆け出した。

車やバイクの台数からして二人や三人といった人数では無いことに警戒し、車から持ち出した木刀を構える。

物音一つしない中、神経を張り詰めて、車やバイクをすり抜けて行くと、少し先に見覚えのあるベンツが止まっていた。

これでも護身には、幼い頃からそれなりの備えをしている。

警戒しながら近づいて行くと、車の陰に安田さんが倒れているのが見えた。

その周囲にも数人の男が倒れていて、辺りには物音一つ無かった。