【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~

イジメに遭った事のあるあたしは、いつしか笑顔という鎧で自分を護る術を身につけていった。

だれもがあたしを明るく社交的な女の子だと信じる中、廉君だけが、その笑顔を作り物だと気付いてくれた。

彼だけがあたしの不安や孤独に気付いて、無理に笑う必要が無いのだと教えてくれた。

だから、あたしが涙を見せるのは廉君の前だけ…

今までも…

これからも…

そう思っていたのに…


何故、この人の前では素直に涙が溢れたのだろう…


涙で霞む視界と、朦朧とする意識の中…


彼の横顔に、見知った人の面影を見た。


ああ…そうか


彼は似ているんだ…あの人に…



安心したあたしは、彼の腕の中に崩れるように意識を手放した。