この時になって初めて、あたしは彼の名前も聞いていなかったことに気付いた。
「あっ…あの、すみません。
お名前を教えてください。この服もお返ししないといけないですし…ご住所もお願いします。必ずお礼に伺いますので…」
「俺もあいつらに用があったし礼なんて必要ない。
その服はここへ来る前に俺が彼女の為に買ったものだから、また同じものを買ってやればいいだけのことだ。返してもらう必要はない」
「でも、そんな訳にはいきません」
「いいんだ。この服を見る度にあんたは嫌なことを思い出すだろうから、処分して良いよ」
そういうと彼はあたしの頭をクシャ…と撫でた。
「俺に気を張らなくていい。それより少し自分を労わってやれよ。
大変な目にあって怖かっただろう?」
フンワリと伝わってくる温かさが、張り詰めていたあたしの心を緩め、思い出したように涙が頬を伝いだした。
彼は少し驚いたようだったけれど、そっとハンカチを差し出してくれた。
「ありがとう…ございます」
「あっ…あの、すみません。
お名前を教えてください。この服もお返ししないといけないですし…ご住所もお願いします。必ずお礼に伺いますので…」
「俺もあいつらに用があったし礼なんて必要ない。
その服はここへ来る前に俺が彼女の為に買ったものだから、また同じものを買ってやればいいだけのことだ。返してもらう必要はない」
「でも、そんな訳にはいきません」
「いいんだ。この服を見る度にあんたは嫌なことを思い出すだろうから、処分して良いよ」
そういうと彼はあたしの頭をクシャ…と撫でた。
「俺に気を張らなくていい。それより少し自分を労わってやれよ。
大変な目にあって怖かっただろう?」
フンワリと伝わってくる温かさが、張り詰めていたあたしの心を緩め、思い出したように涙が頬を伝いだした。
彼は少し驚いたようだったけれど、そっとハンカチを差し出してくれた。
「ありがとう…ございます」



