「綺麗な指輪ですね」
「婚約指輪として彼女にやったものなんだ。
普段は持ち歩いたりしないんだけど、今度彼女のお兄さんに正式に婚約の報告をするんでね。
まさか盗まれることになるとは思わなかったから、マジで焦ったけど…無事で良かった。
彼女が昨夜から凄く落ち込んでいてさ。慰めても泣いてばかりで本当に困っていたんだ」
彼は指輪を愛おしそうに見ながらそう言った。
まるで指輪が彼女そのもののようで、その姿にあたしまでなんだか嬉しくなった。
「大切な指輪が無事でよかったです」
「見つけてくれてありがとう。
…これは俺の母親が唯一残した思い出の品なんだ。
失くしたら彼女が責任を感じて婚約解消を言い出したかもしれない。助かったよ」



