もうだめだと思った―…
もう二度と廉君に会うことは無いだろうと―…
だけど、次に来ると思った恐怖はいつまで経っても来なかった。
不思議に思い、そっと目を開き恐々と先ほどの男へと視線を移動する。
そこには…
長身のとても綺麗な男の人が、あたしに覆いかぶさっていた男を後ろから羽交い絞めにして、ナイフを取り上げている姿があった。
「てめぇ…どこまで腐りきってるんだ。
強盗の次は強姦か? 反吐が出るぜ」
切れ長の目を鋭く光らせると、男をボンネットから引きずり下ろす。
あたしを押さえつけていた男達はリーダーを失い動揺したのか、あたしを拘束していた手足を離し、引きずられていく男を追いかけて行った。
今のうちに逃げなくてはと、痛みに耐えフラフラしつつも、なんとかボンネットから滑り降りる。
転げ落ちたといったほうが正しかったかもしれないが、拘束されていた痺れで手足に力の入らないあたしには、それが限界だった。



