いつもなら心を和ませてくれる窓の外を流れる緑の美しさも、今日は何気ない光景にしか映らない。

紀之さんとの会話が頭の中でガンガンと痛みを伴いあたしを侵食する。

ふさぎこむあたしに安田さんが心配そうに体調を尋ねてくる。

車に弱いあたしを、酔ったと思ったらしい。

少し頭痛がするのだと言うと、別荘まではあと10分ほどだから横になっていくようにと言われた。

身体を横たえると、革張りのシートの冷たさがひんやりと心地良い。

出かけるときにはこんな風に落ち込んで帰ることになるなんて思ってもみなかった。

目を瞑ると今日の出来事が浮かんでは消えてゆき、心が乱される。

でも目を開けると眩暈と吐き気がし、頭痛が更に酷くなった。

体調の悪さは精神的なものなのか、それとも単に車に酔ったのか…


そんな事も自分で解らなくなっていた。