【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~



香織の待つ部屋へ入った瞬間、違和感を感じた。

会った時、香織が何故か泣きそうな顔をした気がしたからだろうか。

それとも、全てが未使用の部屋で、唯一乱れたベッドが艶かしく感じられたからだろうか。

何処か雰囲気の硬い香織。

ホテル内を見学した時に何かあったのだろうかと不安になる。

安田さんの話では、随分と質問攻めにあったり、失礼な視線で見る者もいたらしい。

僕には慣れたことでも、香織にとっては苦痛だったのかもしれない。

「香織待たせて悪かったね。疲れただろう? もしかして起こしてしまった?」

「え…っ?」

「ベッドが少し乱れていたから、横になっていたのかなって思って」

「あ…ああ、う…ん少しだけ。朝から頑張ってお弁当作ったから少し疲れちゃった」

エヘッと小さな舌を覗かせて笑ってみせる仕草も、いつもと何も変わらないのに、何故か違和感を感じた。