香織の待つ部屋へ入った瞬間、違和感を感じた。
会った時、香織が何故か泣きそうな顔をした気がしたからだろうか。
それとも、全てが未使用の部屋で、唯一乱れたベッドが艶かしく感じられたからだろうか。
何処か雰囲気の硬い香織。
ホテル内を見学した時に何かあったのだろうかと不安になる。
安田さんの話では、随分と質問攻めにあったり、失礼な視線で見る者もいたらしい。
僕には慣れたことでも、香織にとっては苦痛だったのかもしれない。
「香織待たせて悪かったね。疲れただろう? もしかして起こしてしまった?」
「え…っ?」
「ベッドが少し乱れていたから、横になっていたのかなって思って」
「あ…ああ、う…ん少しだけ。朝から頑張ってお弁当作ったから少し疲れちゃった」
エヘッと小さな舌を覗かせて笑ってみせる仕草も、いつもと何も変わらないのに、何故か違和感を感じた。



