紀之さんが消えたドアを見つめたまま、動けずに放心していると、ドアのチャイムが鳴った。
警戒しながらドアスコープを覗き見ると、そこには今度こそ廉君が立っていた。
ホッとして涙が溢れそうになったけれど、グッと堪えて微笑んだ。
今のあたしに出来る精一杯の笑顔で『お帰りなさい』と明るく迎え入れ、出来るだけ普通に振舞うように必死に努力した。
搬入トラブルは無事に解決したらしく、表情も晴れやかな廉君に、暗い顔を見せないように、あたしは必死に話題を作っていつも以上に話していた。
笑顔が不自然にならないように…
不安に揺れる心を隠しながら…
紀之さんの事はどうしても話すことが出来なかった。
廉君をこれ以上心配させたくなかったこともある。
でも、一番の理由は、紀之さんから聞かされた事を話さなければならなくなるからだ。
知り得た事実を確かめるのが怖い。
彼の口から婚約者の事実を告げられたら…
あたし達の関係は変わってしまうのだろうか。
警戒しながらドアスコープを覗き見ると、そこには今度こそ廉君が立っていた。
ホッとして涙が溢れそうになったけれど、グッと堪えて微笑んだ。
今のあたしに出来る精一杯の笑顔で『お帰りなさい』と明るく迎え入れ、出来るだけ普通に振舞うように必死に努力した。
搬入トラブルは無事に解決したらしく、表情も晴れやかな廉君に、暗い顔を見せないように、あたしは必死に話題を作っていつも以上に話していた。
笑顔が不自然にならないように…
不安に揺れる心を隠しながら…
紀之さんの事はどうしても話すことが出来なかった。
廉君をこれ以上心配させたくなかったこともある。
でも、一番の理由は、紀之さんから聞かされた事を話さなければならなくなるからだ。
知り得た事実を確かめるのが怖い。
彼の口から婚約者の事実を告げられたら…
あたし達の関係は変わってしまうのだろうか。



