泉原家が権力を使い母の失った記憶に関する全てを封印した為、結婚の事実も息子の存在を知るものも、泉原家の当主様と父以外にはいないという。
一族最大の力を持つ泉原家が何故、そうまでして母の過去を隠さねばならなかったのか、僕には解らない。
だが母は、今も自分に息子がいたことも、愛する夫がいたことも知らず、毎夜夢を見続けている。
幼い頃、母さんが僕と間違えて呼んだ名前は、本当の息子の名前だったのだ。
もしかしたら、母さんが夢で涙するのは、その人たちの元へ帰りたいと心が願っているのかも知れない。
まだ幼かった僕は、失った記憶を取り戻すと、母さんはいなくなるかも知れないと思った。
どうしても母を失いたくなくて…
それから僕は、夢の話を一切しなくなった。
一族最大の力を持つ泉原家が何故、そうまでして母の過去を隠さねばならなかったのか、僕には解らない。
だが母は、今も自分に息子がいたことも、愛する夫がいたことも知らず、毎夜夢を見続けている。
幼い頃、母さんが僕と間違えて呼んだ名前は、本当の息子の名前だったのだ。
もしかしたら、母さんが夢で涙するのは、その人たちの元へ帰りたいと心が願っているのかも知れない。
まだ幼かった僕は、失った記憶を取り戻すと、母さんはいなくなるかも知れないと思った。
どうしても母を失いたくなくて…
それから僕は、夢の話を一切しなくなった。



