母に香織を取られたようでチョット悔しいけれど、二人が仲良くなってくれたことを僕はとても喜んでいる。

「廉君のお母さんって、とっても素敵な女性(ひと)ね。
綺麗で優しくて、お料理も上手で…あたしも大人になったら廉君のお母さんみたいになりたいって、憧れちゃうわ」

そう言って笑う君は、母がどんなに自分と会うことを楽しみにしていたか知っているのだろうか。

毎日ソワソワと待ち続けていたのは僕だけじゃない。

母は本当に香織に会うことを楽しみにしていた。

母が彼女の事を気に入るだろうとは思っていたけれど、香織が母を慕ってくれた事が僕にとっては何よりも嬉しかった。

母は、女の子をとても欲しがっていたから。


いや…


正確には『女の子を』では無いのかもしれない。

たぶん母は、『自分の子を』欲しがっていたのだと思う。

僕は知っている。

母が子どもを望めない身体だという事も

父以外の誰かを深く愛している事も

そして無意識に…

僕の中に『誰か』を見つめている事も