「廉君、寝る前に資料を見るのは止めたほうがいいわよ。
夢の中でも仕事の事考えるのは、身体に良くないもの」

仕事の夢を見ていたと決め付ける香織に、このまま誤解してもらったほうが良いと判断した僕は、「そうだね。気をつけるよ」と言って話を濁した。

世の中には知らないほうが良いことがある。

それを、僕はこの時つくづく痛感した。


………聞こえなくて本当に良かった。


『香織…君が欲しい』


僕が無意識で言ったであろう本音。


もしも聞こえていたとしたら…


香織はどうしただろうか?