「うぅ、寒い…」


薄いグレーの空を見上げて、ひとりごと。

そういえば、今朝のニュースでは夕方にかけて雪が降るって言ってたっけ。

今年はまだ降ってないなぁ…


「─ あれ、芹ちゃん?」


ぼーっとしていたわたしの頭に与えられた、ふいうちのときめき。

…って、ときめいてる場合じゃなくって!


「えっ、あ、その…違っ…!」


さっきまで遠くにいたはずの竹内くんと友達が、わたしの目の前に。


しどろもどろになって一生懸命言葉を探す。

そのくせ『芹ちゃん』と呼ばれる度に跳ねる心臓は変わんないんだから、言葉なんて思い付くはずもありません。


それなのに


「缶捨ててもいい?」


竹内くん、マイペースすぎやしませんか。

『何でそれを今聞くの?』とか、もっと気のきいたことを言えればよかったのだけれど


「…えっと…ポイ捨てはダメだよ…?」


わたしもわたしで、何かずれてるのかもしれません。

もっとも、今は竹内くんの前だから、ドキドキに邪魔されてうまく喋れないだけなのですが。