「─ 芹ちゃん」
缶の中でぷかぷか浮かぶコーンを見つめていたわたしに、竹内くんが呼び掛ける。
優しい声で、照れたように。
「…芹ちゃんのばか」
不思議だね。
『ばか』って言う竹内くんは笑顔で
『ばか』って言われるわたしも嫌じゃない。
「芹ちゃんさ、嘘ついたっしょ?」
「……え?」
予期せぬ投げ掛けに、とまどいを隠せないわたし。
嘘、って?
電車の時刻を一本遅らせたこと…?
いや、でもそんなの竹内くんがわかるはずはなくて…
一人あたふたするわたしを、楽しそうに眺めてから竹内くんが笑って。
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