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頬を撫でる風が、冷たくなってきました。
「─芹(せり)」
「うん?」
お弁当のブロッコリーをつつきながら、お友達の彩月(さつき)ちゃんが言う。
「竹内くんと一緒に帰ったりしないの?」
「…む、無理だよっ。恥ずかしくて喋れない…」
秋の告白は、まさかまさかの大成功。
だけど、ちょっぴり恥ずかしいまま、付き合いはじめて二週間。
「あたしなら、挨拶するためだけにクラスに行く方が恥ずかしいけどなー」
いまだに、挨拶をする関係から抜けられていません。
とりあえず毎日挨拶だけはしようと決めていたのだけど、それだけじゃ周りから見るとオカシイんだって。
わたしは、それだけで一日過ごせるくらいお腹いっぱいになるのに。