「んっ…」

動けない。身体を何かに縛りつけられているようだ。

目を開けると、にっこりと笑う平野がいた。

「起きた?流華チャン♪」
「…ここは?」

聞くと、平野は顔を近づけて言った。

「ここは学校の近くにある倉庫。ホラ、入り口んとこにひまわりが咲いてるの、知ってるでしょ?」

そんなこと知ってる。小さい頃、翔雨達とひまわりの観察をしてた。(でも結局、飽きてしまって最後まで続かなかった)
だが、今はそんなことどうでもいい。

……顔近いっっっ!!ちょっ、鼻くっつく程近づかないでっ!!

と、言いたいところだけど、そんなこと言える雰囲気じゃないし、私だって、そこまでKYじゃない。

「どうしてこんなことしたの…?私をどうする気?」

とりあえず、話を反らす。

「…ねぇ、流華チャンと亜岐波が付き合い始めてから、オレがどんな気持ちだったか知ってる?」
「は…?」

話を反らし返された。マジか。
じゃなくて、訳が分からず、返答に困っていると、

「オレさ~…流華チャンが好きなんだよねぇ~。だから、オレが頑張ってめちゃめちゃアピってたのに全然気付かないし。挙げ句の果てには、亜岐波と付き合い始めたとか…」

…なる程。平野が私に引っ付いていたから、翔雨は私が平野のことを好きだと思ったのか。
今更納得する。
こんな状況なのに、不思議と冷静でいられた。

「だからさ…」

だが、この後の平野の言葉で、私は冷静でいられなくなる。

「流華チャンをオレのもモノにするために…
亜岐波を壊そうと思った」

一瞬、平野の言葉の意味が分からなかった。
否、分かろうとしなかった。

誰が、誰を壊すって…?

壊すって…どういう意味…?

「オレの言ってる意味分かる?キミは人質なの。亜岐波にはさっき連絡しといたから、もうすぐ来ると思うよ…」

平野はそう言うと、パチンと指を鳴らした。

すると、暗闇から幾人もの不良達が集まってきた。

それぞれの手には、金属バットや、鉄パイプなどが握られていた。

「やめて…やめてよ平野!!翔雨を傷つけるのは…「勘違いしないでね」

平野は私に言葉を遮って言い放った。

「全部、流華チャンが悪いんだから」

バアンッッッッ

勢い良く倉庫の戸が開く。その先にあったのは

「流華っっ!!」

翔雨の姿だった。