着いた時間は6時10分。待ち合わせより5分も早く来てしまった。

「くしゅっ」

公園から小さなくしゃみが聞こえた。

こんな時間に誰かにいるのだろうか。

暗闇に目を凝らして見てみると、そこにいたのは

「翔雨!?」
「あぁ流華、早かったね」
「えっごめん‼私時間間違えた!?」
「いや全然、俺が早く着きすぎただけ」

翔雨はそう言って微笑んだ。

「で、こんな時間にどうしたの?」
「…えっと…その…」

急に歯切れが悪くなり、翔雨は大きく深呼吸をして、ハッキリと私に言った。

「俺、流華が好きだ。多分、小学生の時から…」
「えっ……」

寒さのせいか、照れているせいか、翔雨は顔を真っ赤にして言った。
突然のことに、驚きを隠せない私。

「あの時の俺は、凄く弱虫で、告白する勇気なんかカケラもなかった。でも、俺はもうあの頃の俺じゃない。強くなったんだ。流華を守れるように」

途端に喜びが込み上げてきて、温かい涙が溢れ出す。

「わ…私も…翔雨が…好き…です…」

顔を真っ赤にして答える。
そしたら今度は翔雨が驚いた顔になる。

「えっ…流華は平野が好きなんじゃ…」
「…は?なんで平野?」

平野 悠介(ひらの ゆうすけ)。その頃、クラスで一番モテていた男子だ。

「俺はてっきり流華は平野が好きなんだと…じゃあ焦らなくてもよかったじゃん…」

翔雨は俯いて、はーーっと溜息をついた。

「でも私、翔雨に言われてなかったら、ずっとこのままだったと思う。だから、ありがとう、翔雨。私、翔雨のこと…大好き…っ」
「俺も…大好き…」

お互いにぎゅうーっと抱きしめあった。
翔雨の頬は、変わらず真っ赤だった。

それから私達は付き合うようになった。翔雨と付き合うようになってからは、毎日がとても楽しかった。

でも、そんな毎日は1年も続かなかった。



_____悲劇の物語はこれから_____