「それでぇ~、また遊太にバッグ買ってもらってねぇ~」
「また~?野崎ってば金持ち~」

…うっざ
また彼氏の自慢かよ、聞いてて呆れる。

「…華…流華!ここ教えて~」
「あ…うん、ここは…」

私は蒼園 流華(あおぞの るか)。
風原高校の1年生。ちなみにクラスはA組。
入学してから7ヶ月、ただひたすらに優等生を演じてきた。だからクラスの皆からは“物静かで近寄りがたい優等生”として見られている。

「ねー流華ってば~~!!!」
「あ…ごめん、次のは…」

そんな私にわざわざ勉強を教わっているこの子は柳場 柚花(やなぎば ゆずか)。
ゆずは中学からずっと同じクラスで、私の数少ない友達。
今私が考えていること、それを聞いたらゆずは怒るだろう。
バカで天然だけど、友達想いの優しい子だから…

「ねぇ流華?本当にどうしたの?具合悪い?それとも悩み事?何でも言ってね、ゆずはずっと流華の味方だから!」
「うん。ありがとう、ゆず。でも大丈夫、心配しないで」

貴女に言ったら、きっと引き止めるだろうから…

「…あんまり話したくなかったけど、翔雨のこと?」

翔雨。フルネームは亜岐波 翔雨(あきなみ しょう)。私の元カレ。

「おい、その話はもう…」
「あ…ごめん京哉、流華…」

ゆずの話を止めたのは宮藤 京哉(みやふじ けいすけ)。優しくて、温かくて、一緒にいると安心する。
私達4人は幼馴染で、家も近いことからいつでも一緒だった。

あの時までは________

「…ごめん、ちょっと次の授業サボるね」

私は駆け足で教室を出る。

「えっ流華!どこ行くの!?」
「珍しいな、流華が授業サボるなんて…」
「やっぱり寂しいのかな、流華…私達には何もできないの…?ねぇ京哉」
「…あの事は俺達がどうこうできることじゃない。ただ確実に言えるのは、流華は何も悪くない。それだけだ」


ーーー…

「はぁっはぁっ…」
勢い良く階段を駆け上がる。
立ち入り禁止の屋上。扉の鍵は開いていた。

ギギィィィ

古びた音を立てて開いた扉の先にあったのは

「すごい…っっ」

憎らしい程に蒼く広い大空だった。