~太陽Side~
階段を駆け上がる音がする。やっぱり来た。
「太陽…」
やめろ…
そんな哀しい声でオレの名を呼ぶな。
「オレの過去、聞いてくれる?」
「うん…」
慈しむような瞳でオレを見るな。
「始まりは、オレが9歳の時だ」
オレは流華に、悪夢のような過去を話し始めた。
ーーー…
「…と、まぁこんなとこかな」
話を終えたオレは薄笑いを浮かべ、溢れそうになる涙を必死に堪えた。
「要するにオレは厄災(やくさい)の子って訳だ。どう?オレのこと嫌いに…」
ぎゅう…
流華が後ろから抱きしめてきた。
とても優しく、割れ物を扱うようにそっと。
「嫌いになる訳ないよ…、だって、貴方はこんなにも温かくて優しい。太陽が厄災の子?そんな訳ないじゃん。…大切な人がいなくなってしまう悲しみは私にもよく分かる。私なんかじゃ太陽の家族の代わりになんてなれないけれど、私はちゃんとここにいるよ。自分を孤独だと思わないで…。大丈夫、太陽は独りじゃないよ…」
やめてくれ
「同情なんて…いらない…」
戻れなくなる
「違う…違うよ…同情なんかじゃない。私は、貴方の傍にいたい」
嘘だ
「どうしてそんなこと言うんだ…死ぬかもしれないんだぞ!!!」
オレは声を張り上げる。
嫌われても構わない。それで流華が傷つかなくて済むのなら。
「…貴方は悪くない」
「やめろよっっ!!何でオレに関わろうとするんだっ!オレはもう…自分の所為で誰かが傷つくところを見たく…ねぇんだよ…」
お願いだから、オレに関わるな…
「太陽の家族が亡くなったのは太陽の所為じゃない。いつまでも過去を引きずっていたら、前に進めないでしょ?」
「…そう言ってるけど、お前だって元カレのこと忘れられてねぇじゃん」
少し強く言い過ぎたか。想い人に嫌われるように話すのは正直言って辛い。それでも、こうでもしていないと本当の自分が出てきそうになる。それじゃダメなんだ。
