~流華Side~

「おはよ~流華♪」
「はよ」
「おはよう二人とも」

今日もゆずと京哉と一緒に学校へ行く。

いつも通り話していたけど、心の中では違うことを考えていた。

“太陽、今日も学校に来てるかな…”

この感情は何だろうか。胸の辺りがモヤモヤして苦しい。

私は、この感情を知っている…?

たしか、翔雨に告白できずにいた頃、『好き』の一言が言いたくて、でも言えなかったあの頃。

断られるのが怖くて、嫌われるのが怖くて、もう一緒にいられなくなるんじゃないかと、私に向けるあの笑顔が遠く離れてしまうんじゃないかと、そんな想いが頭の中でグルグルと廻り、ココロがぎゅうっと締め付けられたような感覚に襲われた。

似ている。

とても似ている。


でも、これはきっと恋じゃない。恋であってほしくない。

もう、傷つきたくない。

あの時決めたじゃないか。もう、恋はしないと。


「どしたの流華、難しい顔して。考え事?」
「…なんでもない。気にしないで」
「ふぅん、そっか」

ゆずは腑に落ちない様子だったけど、それ以上は聞かないでいてくれた。

それから少しして、学校に到着する。

教室に入って私が最初に探したのは

《いない…》

太陽の姿だった。

《まぁ、最初から教室にいるなんて思ってないけど…》

教室にいないと分かると鞄を置いて、駆け足で教室を出る。

動き出した私が向かったのは、この学校で一番空に近い場所。

__屋上__

階段を駆け上がり、静かに戸を開けると、視界に映ったのは広い青空と

「太陽…」

私が呟くと、太陽は私を見ずに言った

「決心が…付いたんだ」
「え…?」

様子がおかしい。決心が付いたってどういうこと?

「流華、今日はさ…オレの過去、聞いてくれる?」

太陽が、小さく微笑んだ気がした。でも、どこか悲しみを、苦しみを帯びた声。

声が震えている…?

「うん…」

私はただ、呟くことしか出来なかった。