オレは夢を見た。悪夢のような過去の夢。

オレだって、あの時までは、極普通のガキだったんだ。


「ただいま~!父ちゃん、母ちゃん!!」
「おかえり、太陽」
「おかえり。ったく、ガキは元気だなぁ」

当時のオレは9歳。思春期なんてまだまだで、家族が大好きな頃だ。

家族構成は父、母、オレ、そして

「ただいま!兄ちゃん!」

「おう、お帰り太陽」

5歳年上の兄、龍星(りゅうせい)。

兄はいつも、オレに出来ないことを簡単にやってのける。
そんでもって誰にでも優しくて、オレの憧れだった。

いつか兄のようになりたかった。そして、兄を追い抜かしてやるんだって毎日のように思っていた。


でも、その“いつか”が来ることはなかったんだ。

11歳の冬、兄が交通事故で死んだ。
信じられなかった。信じたくなかった。

今朝だって笑顔で『行って来ます』って言ってたじゃんか。
オレ、『行ってらっしゃい』って言ったじゃん。
『行って来ます』って言ったら、帰って来なきゃダメなんだ。

_なぁ、早く帰って来てよ…兄ちゃん…__

オレは、ただ涙を流し続けた。


それから3年後、オレは14歳。兄の居ない生活は寂しかったけど、兄の分まで生きようって決めたんだ。

でも、そんな決意もすぐに崩れていった。


___両親の死__


母は元々身体が弱く、それでも一生懸命働いてくれた。
でも、それが命取り。母の死亡原因は疲労による病状悪化。
父は母の死に絶望し、ビルの屋上から飛び降り自殺。

耐えられなかった。当たり前だ、まだ14歳なんだから。

オレの大切な人、家族は皆死んでしまった。

もしかして、オレの所為?オレが家族を愛していたから死んでしまったのか?
 
それからオレは、人を愛することをやめた。