俺は小笠原に微笑んでから小さい声で言った。 (教科書忘れた。見せてくんね?) すると小笠原はびくっとして、わたわたと机を近づけてくれた。 やっぱりな。 こいつ、今まで緊張して俺と話せなかっただけなんだ。 今だって、机はくっつけてるけど椅子は離れたところにおいて座ってるし。 慎ましやかな子なんだな。 (次からは忘れないでよね) ぼそっと呟く小笠原。 驚いて横を見ると目があった。 目があったのは初めてかもしれない。 綺麗な黒い瞳が俺を捉える。 一瞬時間が止まったかのように感じた。