「?」
「あぁ、いーよ。
まだシズルはお子ちゃまだからわかんないだろーし、……ふっ」
「いまバカにしたっ!」
「してないしてない、本当のこと言っただけー」
「バカにしたこと謝れっ!」
「はいはいごめんね、シズルちゃん。
お腹すいたから早くお昼買ってきてー」
「う、」
「さっきばば抜きで負けたでしょ?」
「うー」
「シズは約束破るの?」
「ッ!アデルのアホッ!へちゃむくれ!大人のくせにっ!」
おぼえてろっ!という言葉を残して、彼女は椅子にかけてあったコートを掴んでバタンっと大きな音をたてて出掛けてしまった。
シズルが居なくなると、途端に室内が寂しそうな雰囲気になる。
さっきの威勢はどうした、部屋。
特捜の自分のデスクに帰ろうと踵を返す俺にアデルの吐息が聞こえた。
「グラン・フォードだろ?
その不運な捜査官さまは」
『!なんでわかったんですか?』
「最近見ないから」
『知り合いなのか!?』
俺はアデルに驚いて詰め寄るが、彼は飄々と続けた。
「全然、話もしたことないよ」
シズルの入れたコーヒーに砂糖を入れて、マドラーでかき混ぜながら俺をみてふふっと不適に笑う。
カップの近くに砂糖の残骸があった。
……おいおい、いくつ入れたんだ?



