「じゃ、一週間後にまた来い。
今度は手土産ぐらい持って来いよー」
にやにや笑うアデルにお辞儀をして、コーヒーに口を付けたシズに向き合う。
『ありがとう、君のおかげで話ができた。
今更失礼だが名前は?』
彼女はきょとんとした。
あれ?変なこと聞いたか?
幾分か間が空くと柔らかく笑い声が耳をくすぐった。
「シズル、シズル・マユズミ」
よろしくね、そう答えた時の可愛らしい笑顔に身体の中心に衝撃が走る。
冗談ではなく、本気できれいだと思った。
花にも負けない可憐さがある。
何だ?
動悸がおさまらない。
顔が熱い。
どうしたんだ?俺は。
自分の反応に困っているとシズルは下から俺を覗き込んできた。
「顔赤いチトセ。風邪ひいたか?」
そういうや否や、彼女はいきなり俺のネクタイを掴んでぐいっと引っ張った。
「熱はないみたいだな」
シズルの顔が近い。
オデコがくっついていてシズルの少し冷めた肌が更に頬を熱くする。
綺麗な白い肌とぱっちりした灰色の瞳が目に入り、鼻の下の唇が妙に色っぽい。
どうにかなりそうだ。
「シズ、そのくらいにしとけ。
なんだかチトセがかわいそーだ」
……、同情している割にはとても楽しそうですねアデル。



