シュプレヒコール!




あまりの罵倒に面食らった。

随分、噂とは違うな。




『……勘違いとは?

貴方が去年起きた過去最悪と言われるテロを未然に食い止めたことは、ココの者ならば誰でも知っています。

そんな貴方だからこそ私は話を聞いてほしいんです』



まるで彼には、俺の訴えが聞こえていないかのように、わずかに外の光が零れているソファーに座りタバコの火をつけた。

俺は吐息とともに出た紫煙に眉をひそめ、まっすぐに彼を見る。

しかし彼は全く目を合わせてくれない。




人伝で耳に入った彼の話と、今自分の目の前にいる男にはギャップがありすぎる。

……、人違いということはないよな。



『あの、聞いてます?』

「アデル、チトセが呼んでるよ。
無視はだめ」



ふと顔を向けるとドリップマスターでコーヒーを入れる彼女と目が合った。

シズは俺に向かって微笑む。

その時俺の頭の片隅で、パチッと何かのスイッチの入った音がした。



なんだ?今の。



「チトセ、コーヒー飲む?」

『あ、うん』



やばい、久しぶりに敬語抜けたかも。