「君、誰?」
彼の視線は俺を鋭く射抜いた。
立ち姿がなんとも優雅で堂々としている。
あぁ、こういう男になりたい。
そう思わせる何かがある。
…、多少性格には難がありそうだが。
『申し遅れました。
私は特別捜査官のチトセと申します』
「……ほぉ、花の特捜がこんな端っこまでお出ましとはねぇ、で何の用?」
すごい威圧感だ。
覚悟なしでココに来ていたら、完全にアウトだっただろう。
でも俺は、やるべきことがある。
『俺がここに来たのは貴方に力を貸して頂きたいからです、Mr.アデル』
最後の頼みだった。
彼ならばもしかしたら誰もが見落とす小さな歪みを見つけてくれるかもしれない。
そしたらアイツが帰って来れる。
しばらく沈黙が続いた。
アデルの大きなため息が部屋に溶け込んだ時、彼は怠そうに口を開いた。
「あぁ、俺はお前みたいな勘違い真面目バカが一番嫌いなんだ。
帰れ、目障りだ」



