正義のヒーロー



あたしは今日も病院だから、みんなより一足早く帰宅をした。



「じゃあ、また明日ね。」




「「ばいばーい!」」




あたしに手を振ってくれた中に、優芽とコトはいなかった。




あたしは、ゆったんに避けられるだけじゃなくて、コトにも優芽にも、嫌われちゃうの…?





涙が出そうになった。


でも、泣いちゃいけない。

グッと堪えた。




「せったん…?」



下駄箱で靴を履き替えていると、不意に呼ばれた。




「ゆっ…。」



“ゆったん”そう呼ぼうとした時、さっきのコトの言葉を思い出した。


あたしはもう、そう呼ばない方がいい。





「女ばすはもう終わったの?」




「まだ。でもあたしは病院だから。…じゃあ。」


「なぁ。」


足早に去ろうとするあたしを、ゆったんが呼び止めた。




「なに?」




「そんな辛い顔すんなよ。泣くのとか辛いのとか我慢すんなって。俺が……。誰かが絶対、手拭いになってくれるから。」




“俺が手拭いになってやる。”
いつの日か笑い飛ばした、でも、励まされた言葉。

もうその手拭いはゆったんのものじゃない。

あたしはもう、完全に見放されたんだ。



喉の奥が熱くなった。




「手拭いって、やっぱり可笑しいよ。」



そう言うと、ゆったんは眉を下げて笑った。




「でももう、ゆったんは手拭いになってくれないんだね。口ばっかり…。」



あたしはゆったんを一度も見ずに歩き出した。



後ろからのあたしを呼ぶゆったんの声が聞こえる。




それでもあたしは歩き続けた。