右手の薬指にすっぽりのはまるそれは、唯一の彼の独占欲の証

左じゃない

予約だから、と言われて迷わず右にそれは収まった

ふと頬杖を突いた時

携帯をいじる時

何気ないふとした瞬間と

そして、休日の彼の右手にも同じものがはめられているのを見るたびに

思わず笑みが漏れる

それだけで少しだけ不安が消えていくから不思議だ

くるりと回すと少ない照明を反射してきらりと光る

もう右手に収まるようになって二年ほどが過ぎるけれど、

その輝きは褪せることを知らない

「電話、してみようかな」

あの、落ち着いた

時々優しさを孕む声に会いたくなった

園ちゃんと莉彩がいろいろ言うからだよ、なんて心の中で言い訳をしながら

忘れ物がないか確かめて薄手のストールを首に巻く

ゆっくりと閉められたロッカーの内側には、中庭で入院していた女の子が撮ってくれた

数少ない二人だけの写真が貼られていた