そんな出来事から一年と半年

医療界を震撼させた海斗の副院長就任、一般女性との結婚報道

そこに彼女の姿はなかったけれど

そこが海斗らしくて

また独り笑ってしまった


「なんか不発ー」

「何がよ」

春の訪れが実感できるようになった4月

相方の奈々とともに帰路に着いていると奈々が不満げに空に向かってつぶやく

「黒崎先生の結婚報道。智香もっと悔しがるかと思ったのにさ」

「え?無理に決まってんじゃん。しるふさんと黒崎先生お似合いだしさ」

ついでにいうとべたぼれだしさ

「はあ!?何何!?いつのまに黒崎先生の奥さんと知り合いになってんの!?」

もしかして奥さん側から落とそうってんじゃ

あんた怖いからね

一歩引き気味の奈々と視線も合わせずに

「はいはい。何とでも言っててよ」

こっちは10年後に向けて日々鍛練中なんだから

少し強めの風にコートの前を閉めながら返す智香