「お疲れ様です」

いつものように駆け下りた階段

少し照明を落とした院内

一歩出れば突き刺すような寒さが待っている

でも、その前に

出入り口のその横

温かさそうなマフラーをしっかりと首に巻きつけて

寒がりのくせに腰丈のラインの綺麗なコートを着込んだ海斗が待っている

「海斗、お待たせ」

見上げればあまり感情のない、でも優しい瞳が応えてくれる

歩き出して流れるように差し出された手を

小さく微笑みながら握り返す

大きな手の中に感じる堅いシルバーリングの感触

それがうれしくて温かい手をぎゅっと握り返す

決して離さないように

離れないように

これからも

ずっと