こっちは体重計の数字とにらめっこしているというのに

ホント、嫌味

しるふの口には出さない想いを感じ取ってか海斗が口だけで笑う

いっぱいいっぱいに伸ばして回した手に重ねられた一回りほど大きな手

それがあやすようにリズムを刻む

その感覚が心地よくて、そっと目を閉じる

もっと近づきたくて

すでにないに等しい距離を埋めるように腕に力を込める

「しるふ」

呼ばれた名前

低くてよく通る声が耳をくすぐる

「なあに」

「悪かったな、巻き込んで」

海斗の言葉に見上げると見下ろしてくる漆黒の瞳

数秒間の沈黙の後、

「今更だよ、海斗」

告げる声は、凛としていて揺らがない

「海斗に恋した時からもう巻き込まれてるもん」

そう、この恋に落ちた時から

この恋をずっと大切にしていきたいと思った時から