朝一の新幹線に飛び乗って足早に帰ってきた部屋で

あまりに気持ちよさそうに寝ているものだから

「一瞬たたき起こしそうになったと」

「そう」

ああ、それは、なんというか

「…その、心配かけてごめんなさい」

海斗のことだから口には出さないだけで、実は言っている以上に心配してくれていたはずだ

「いいよ。巻き込んだのこっちだし。飯田とバット振ってただけなら」

独りで抱え込んだりしていないのなら、それでいい

そう言って強めに撫でてくれる手は、でもとても優しい

ちゃんとたんこぶをよけてくれるところも海斗らしい

「泣いたりしないよ。泣きたくなったけど。あと、莉彩にいろいろ愚痴ったけど」

それと少しだけ不安になったけれど

でも

「海斗は、浮気なんてしないでしょ」

それがわかっているから、泣いたりなんてしたりしない