「もちろんいいわよ」

ああ、今回は何事もなく終わると思っていたのにな

そう思ったのは、きっと自分だけじゃないはずだ

「私さ、モテる海斗が嫌いだった」

最後のボールが転がって、息を整えてからボタンを押す

「モテる海斗見てて不安になる自分がもっと嫌いだった」

それはもうずっと前の話

「信じたくても不安ばっかりが先行して、自分に自信もなくて、なんで海斗は私を選んだんだろうってそればっかり気にしてた」

「うん」

そんな時もあった

あの時は、その瞳の奥にある優しい光に気がついていなかった

「でもさ、ある時気がついたんだ。私は、私が傷ついてるって言いながら海斗を傷つけてた」

コーン、とボールがやや高めに飛んでいく

「一番信じてほしい人に疑われて、あることないこと勘ぐられてる海斗が、実は一番つらいんだって」

きゅっとわきを締めて、狙いを定める

「それに海斗に好かれたくて海斗の周りをうろちょろしてる人たちは、結局海斗を黒崎病院の跡取りとしか見てないんだって」

そんな女に海斗がなびくわけがない