じゃあ、なぜ同棲しないのか

それを問い始めると切りがないし、

たぶん根底にあるのは今のこの生活を気に入っている自分たち

帰る場所は同じじゃないはずなのに当たり前のように同じ場所に帰るこの生活が

「ただいまー」

ひんやりとした部屋の空気の中、電気をつける

前に帰ってきたのはいつだっただろうか

懐かしさを覚えたことに苦笑しながらそっと記憶を手繰る

部屋を見回すと目に入る二人分の食器

狭いシングルベットに並べて置かれた枕

海斗が持ち込んだ紅茶の茶葉用の一角

そこから一袋をつまんでお湯を沸かす

教えてもらったおいしい入れ方を思い出しながらお湯に色がついて行くのを眺める

そっとマグカップに鼻を近づけると湯気とともに香りがたつ

ふと息をつきつつソファに腰かけて薄くなった携帯をカバンから取り出し、

ロックを解除すると

絶妙なタイミングで携帯が振動し始める

「っと」

撮り落としそうになったそれを持ち直して画面を見ると表示されているのは、