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「和彦さん!?何をしてるんです!?」


「え…、親父の墓参りでも…と…」


自分の姿を見れば片手にバケツ。
あぁ、汚れるのが嫌いな姉さんは、
こんな姿見たくないか。



「そんなことよりも早く、
この家を誰が継ぐのか……、
はっきりさせましょう?」


「また、その話ですか…」



俺は城ヶ崎和彦。23歳。独身。


俺は先日父親を亡くした。


母親は既に他界しており、
頼みの綱であった父もいなくなったのだ。



しかしまぁ、父は所謂金持ちで。



当然、遺産問題が出るわけでして。



今日の出勤は午後から。



それまでに墓参りに行きたかったんだけど、
どうやら無理そうだ。



「だから、俺はいらないですから。
兄さんと姉さんで決めて下さい」


「ふんっ、まぁそれが当然よね。結局貴方は、
私達とは血の繋がりのない余所者だし」


「…………はい。
だからお二人で決めてください」



そしてそんな義父と俺は、
血が繋がっていない。


まだガミガミと五月蝿い姉さんを振り切って
自分の部屋に戻る。




―――――ことはどうも出来ないようだ。





「やぁ、二人とも。おはよう」


「……おはようございます」


「兄さま…、おはようございます」




兄の登場だ。