「……今日は、なんて夜でしょう」



自室の窓から見える月が歪む。
風が、痛い。



「あらあら、お嬢さん♪
そんな哀しい顔してお月見かい?」



「え………??」



前には人の顔。
さらりと流れる髪は
黒く青みのある艶やかな
烏の濡羽色(ぬればいろ)。



「誰、ですか…?
ここ二階だし、下に踏み台なんて…」



「僕だからね♪」



「い、意味分かりませんっ!!」



にこりと笑う人物から、顔を背ける。



「……え、『僕』?……男?」



「え☆今更?」



男は愉快そうな顔で、私を見る。



「だって可愛らしいお顔をしてるし、
烏の濡羽色の髪…。」