―――――ドンっ!
私は壁と尾山に挟まれた。
尾山の瞳に吸い込まれそうになって、目線を外せれなくなった。
2人の間に時間なんか無くなった様で。
心臓の鼓動が早くてうるさい。
尾山の顔がぐっと近付いた。
「ちょ、尾山っ…っ!」
「…――――っ」
腕を捕まれて、―――キスされた。
なんか、怖くて
なんか、いつもの尾山じゃなくて
なんか、泣きそうになって
少しだけ、嬉しいような気がした。
しばらく唇が触れていたけど、
それから何回か角度が変わった。
苦しくて、切ない。
「……っは………おや…ま」
名前を呼んだ。
すると、尾山は唇を離して
掴んでいた腕もゆっくりと離した。
「ごめん、今のやつあたり。」
「あ…」
「帰る…ごめん」
尾山は私と一瞬も目を合わせないまま、教室から出ていった。
私の唇には尾山の唇の熱が残っていて、
私も、この唇の熱の様に一緒に
消えてしまいたくなった。
オレンジ色の空に
青い溜め息が垂れるように、
秋の空が冬の空に変わろうとしていた。