「なんで泣いてんの?」


オレンジ色に揺れる教室に、同じクラスの尾山がいた。

壁に持たれかかっていた。


「…は、お前うぜえー」


" フラれたんだ、結局… "

私はうつむく尾山を見て思った。




「抹田さん、やっぱ他に好きな人いるらしいわ…」

「…うん、」


尾山の隣で、私も壁に持たれかかった。


「バカみたいだなー俺。ほんと。」

「そんなことないよ、気持ち伝えれるなんてすごいし」


…私なんか気持ちさえも隠してる。



「慰めてんの?」

「あ、うん…」

「…帰んねえの?」


尾山の声が少し強くなった。


「一人になりたい…、ちょっと今は誰ともいたくない」


心に、尾山の言葉が刺さる。
 
痛い。…何も言えない。


「お前といると…抹田さんのこと相談してたこと思い出すから辛い、正直」

「……抹田さんのことなんか、忘れればいいじゃん」


私がボソッと呟くと、尾山が隣で固まった。

しまった、今のは傷付けた。


「…は?お前にこの気持ちなんかわかんねえだろ!」

「おや…ま、あの、」

「はやく帰れよ!」



尾山に腕を捕まれ、教室のドアまで引っ張られた。



「だから、あのさ、私っ」

「喋んな」


立ち止まった尾山。
声が震えてる。


「違う、今のは…」

「黙れよ」

「私、尾山のことっ――…」