つまり、自分は女子だとバレていながら騎士のフリをしていたということだ。それも、約一日。
埋まりたい。
ミヤコは本気で思った。むしろ埋めてくれ。
何が悲しくて男装してなきゃならなかったのか。
自分がいろいろと悩んでいたのがすべて馬鹿らしく思えてくる。
「……わかってたなら、なんで言ってくれなかったの。」
「ん、だって確証がなかったし。違ったら失礼だと思って。」
「そういうとこ生真面目だなお前。」
「ミヤコって普段からその口調なんだ。」
「……まあ、そうだね。」
「だからなおさら確証がなかったんだと思う。」
「普段の口調を改めようかと思う。」
ミヤコは大きくため息をついた。
それから紅茶に口をつけた。ほっとする香りだ。
たぶんノアとこの話を続けても無意味だ。
なんとなくどこかのタイミングでミヤコを女子かなーと思っていた程度で、でも確証はなかった。わかるのは前にも後にもこれだけだ。
結果的に、ミヤコが女だとわかってもあからさまに態度を変えられなかったのは、大きな救いだったと言える。
「……ミヤコ。」
不意にノアが名前を呼んだ。
ミヤコは一瞬動きが止まる。
かなり濃い二日間を共にしたが、本名で呼ばれることはなかったのだ。
だからミヤコは、自分に言い聞かせる。
慣れないのも、無理は、ない。
「……なに。」
紅茶から顔を上げる。
ノアはミヤコをじーっと見つめていた。
お返しと言わんばかりに見返すが、正直、居たたまれない。


