少年はしばらく押し黙っていたが、不意に顔を上げると手綱を握り、馬を歩かせ始めた。
ミヤコはその様子に首をかしげた。しかし事情がよくわからないのであれば、自分勝手に憶測を立てるのはよくないだろう。
そう思って気にするのをやめた。代わりに尋ねる。
「そういえば、お前名前は?」まだ聞いていなかったなと思い出したのだ。
少年は馬の上からミヤコを見下ろす。
「……ノア。」
「ノアか。」
「あんたは?」
「……ミヤだ。」
ミヤコというのは女性名だ。すべて言ってしまうと自分が女だとバレかねないと思い、咄嗟に最後の“コ”だけ抜いた。
すると少年――ノアは、たった今教えた名前を「ミヤか……」とつぶやいた。
「……変な名前だな。」
「よく言われる。」
嘘だけどな。
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ラクサー国の隣国、オウーイ国は賑やかな国だった。
広大なラクサー国に比べその広さは劣るものの、陽気で愉快な雰囲気の街は、来るもの皆を笑顔にしてしまいそうな、そんな明るさを持っていた。
ラクサー国の街は、賑やかではあるが、ここまで陽気な雰囲気は持っていない。どちらかと言えば、穏やかな雰囲気を持つ街だった。
隣国なのにここまで違うのか、とミヤコは街並みを見渡して密かに驚いていた。


