時が夕刻へと移りゆく。
三人は広場に立ち寄り、演奏と踊りを眺めていた。
昨夜同様に、広場の周りには椅子とテーブルが並べられ、人々が集まってきている。
ミヤコはその様子を見ながら「今日も宴か。」とつぶやいた。本当にこれが日常らしい。
広場を見渡しているミヤコの隣で、ノアが会話に加わる。
「酒が飲めるともっと楽しそう。」
「たしかに。」
「18歳になったらまたおいでよ。」
「うん。……え?」
当然だと言わんばかりのノアの言葉に、ミヤコは意表を突かれて顔を上げた。
目が合うと、ノアは首を傾げて見せた。
「どうしたの。」
「いや……」
どうしたの、は、おまえのほうだろう。
「もう、この国には来ない?」ノアが尋ねる。
「え、いや、来る。絶対来る。」ミヤコは思わず首を振った。
――ノアに、会いに来る。
そう言いたかった、言おうとした。
けれど口を開いた瞬間、周りがわあと歓声を上げたせいで、出かけた声は引っ込んでしまった。
ミヤコたちの数歩先から、ハルトが「見てください! すごいです!」と振り向き、興奮したように右手人差し指を伸ばして広場の中央を指さした。
二人は促されるまま広場の中央を見やる。
そこには、踊り子のひとりが空中を綺麗に舞っている姿があった。


