自分は女の風上にも置けないと言われてきたが、どう足掻いてもやっぱり自分は女だったなと痛感した。もういい加減、ノアを騙すのもつらくなってきた。

 けれどなんだか、自分が本当は女性であり、隣国の姫であると言ったら、ノアはどんな反応をするだろう。

 昨日や今日みたいに、笑って話してくれるだろうか。

 それだけが、ミヤコの足枷になっていた。

 どうして昨日今日出会った人に対して、そこまで考えてしまうのかわからないけれど。

 だけど、ずっと一緒に居られるわけではない。ミヤコは自国に帰らなければならないのだ。

 だったらもうこのまま、目いっぱい楽しんでしまえばいい。

 そう開き直って、ミヤコは急いで身支度を済ませる。階段を下りていけば、扉を開けたそこに、同じ顔をした、けれど確かに違う二人がミヤコを待っていた。

 目が合うと二人とも笑った。

 片方は嬉しそうな笑顔で、片方は感情を隠した微笑みで。

 ミヤコはそれが、おかしくて笑った。




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 街は昨日同様、活気に満ち溢れていた。

 人々の声や笑いがそこかしこから聞こえる中、ミヤコたち三人は街を探索していた。

 いくらこれだけの人が居るからと言って、そしていくら王子が一般民の衣服を着用しているからと言って、その綺麗な顔とオーラはどう足掻いても隠せないだろう。

 と、思っていたミヤコだったが、変装のつもりらしく片目に眼帯のようなものをつけたハルトは、まるでそれが普通だとでもいうように、街の中に溶け込んでいた。

「あのお菓子美味しそうです!」とか「見てくださいあの子猫! 可愛いですね!」だとか言いながらはしゃぎまわっている。

 この、王族も国民も関係ないと言うふうな性格は、ハルトの持ち味なのだろう。

 対するノアは、昨日と同じくフードを目深に被り、はしゃぐハルトを呆れ顔で見守っている。

 そしてミヤコはといえば、昨日来たばかりの街がまだまだ目新しく、ハルトほどではないがあれこれ目移りしては、二人から離れない程度にうろうろしている。

 三者三様の街へのお出かけだ。