Different world story





「……もしかしてお前腹減ってただけとかそういう。」

「…………。」


 ぐう、と返事の代わりに、少年の腹の虫が鳴く。

 ミヤコはたまらず「ぶっ」と吹き出した。途端に少年が眉をひそめるが、一度笑い出したら気がすむまでは収まらない。

 ミヤコはしばらく笑った。笑いに笑った。ここまで笑ったのは、いつ以来だったか。


「……笑いすぎだろ。」少年は声に棘を乗せ、ミヤコを咎める。

「あははっ、ごめん面白くて。」ミヤコは目尻に浮かんだ涙を拭った。

「あー……よし。じゃあこのまま一緒に飯食いに行こう。」

「は?」

「腹減ってんでしょ。」

「いや、でも俺は持ち合わせが、」

「いーよ。行き倒れてた人間からたかろうとか思ってないし。ここはあた……俺が払うから。」


 一人称を改めて気づく。今の会話は少し、素のまま喋っていた気がする。

 しまった、女だと気づかれたら厄介だ。

 しかし、少年は気づく素振りもなく、ミヤコを見つめて、それからペコリと頭を下げた。


「……ごめん、お願い、します。」


 人に何かを頼むことに慣れない様子が、手に取るようにわかった。

 ミヤコはそれが微笑ましいのか、少し痛々しいのか、どちらに取ったらいいのだろうと迷い、複雑な笑みを浮かべた。


「うん。そんじゃ、馬に乗るか。立てる?」

「ん。」


 短くうなずいた少年が立ち上がる。ミヤコはその腕を持って支えた。