「……なに?」

「その“いただきます”って、初めて聴いたんだけど。」

「あー。」そういえば一緒に街でご飯を食べた時は、ミヤコも浮き足立っていて言うのを忘れていたのだった。

「これ、うちの国の文化。」

「へー。」

「食材に感謝の意を述べる“いただきます”ってことらしい。」

「……なんか、すごくいい文化。」

「オウーイ国でもぜひ。」

「ハルに言っとく。」


 冗談めかして笑った後、ノアも手を合わせて「いただきます」と言った。

 それからフォークを片手にミヤコの作った料理を見つめ、そしてフォークを使って料理を口に入れた。

 ミヤコは黙ってそれを見つめた。どうしても感想が気になったのだ。

 城で厨房に忍び込み、自分で料理を作っては使用人に怒られていた記憶が蘇る。

 まさか暇潰しの料理がここで役に立つとは思っていなかった。

 しかし、自分で作った料理を誰かに食べさせたことがない。美味いかマズイか、その感想を誰かにもらったことがなかったのだ。

 ノアは料理を食べて瞬きをする。

 ミヤコはそれだけで判断できなかった。けれど。


「……あ、美味しい。」


 思わず、といったようなノアに感想に、ほっとして胸を撫で下ろす。


「……よかった。マズイとか言われたら剣で切腹するとこだったわ。」

「せっぷく?」

「なんでもない。美味しいならよかった。」

「ん。美味しい。」


 ノアの素直な感想にミヤコも安心し、それから料理を食べ始めた。