「あぁ、ミヤは大丈夫だと思う。」ミヤコの心情を察したのか、ノアがそう付け足した。「ハルに光、借りなかった?」

「あ、うん。橙色の……」

「じゃあ大丈夫。ハルが許可してるってことだから。」


 なるほどあの光にはそういう意味があったのか。

 それなら先に教えておいてほしい、とミヤコはこの場に居ないハルトをド突きたい気分に駆られた。

 まったく重要事項を重要だと認識していないようなあの城の住人には、隣国の人間といえども困ったものである。

 しかし話は、それどころではない。


「え、それで、バレてノアは……」

「追放。」


 重すぎる一言を、ノアはなんの躊躇いもなく口にした。


「普通ならそこまで行かないと思う。でも見張りが、護衛の地位を目指す人間ばかりで。」

「……地位を奪われそうだと思ったのか。」

「そういうこと。」


 バカな、とミヤコは耳を疑う。

 一国の王子を護衛しようと目指す者が、そんなバカげたことをしていいとでも。


「この館から連れ出されて、国の外に出されてそのまま。」

「……それじゃあ、」

「ミヤと出会ったのはそれから二日後。正直、あんたが神にも見えた。」


 そんな大袈裟な、とも思ったが、約二日も飲まず食わずだったら、通りかかったどこぞの騎士を見てもそう感じてしまうかもしれない。

 しかしながら。


「……でも、ハルトはノアを探してる風だった。」


 そうだ。ノアを見つけた時のハルトの反応を思い出せば、その違和感に気づく。

 あの時ハルトは「無事でよかった」と言っていた。仕舞いには泣き出したほどだ。

 いや、とそこまで考えミヤコは思考を半回転させる。つまり、ハルトは知らなかったということだ。

 ノアの追放を。