Different world story





 それは間違いなく、あの南京錠の話だろう。ミヤコの考えは的を得ていたということだ。


「……やっぱり。」

「壊したでしょ、ミヤ。」

「えっ。」

「南京錠。ミヤ、壊したんじゃないの。」

「…………。」

「音が聞こえたから、あの時。ガキンッて、すごい音。その後にミヤの声が聞こえたから、あぁと思って。」

「…………。」

「ミヤが、あれ壊してくれたんだなって、思ってさ。」

「……え。」

「ちょっとスッキリした。」


 そう言って、ノアは少しいたずらっぽく笑った。

 こんな顔もするんだなあと、ミヤコは何故だか見つめてしまった。


「……ハルが居るから、鍵もかけられなくなって、外にも少し出してもらえるようになった。」ノアは話しを続けた。「ハルが居なかったら、俺はこんな人間らしい生活できてないよ。」

「…………。」

「家具とか本を、少しずつ持ってきてくれて、いろんな遊びも教えてくれて。あまり外に出られない俺にいろんな話もしてくれて。その果汁ジュースも、ハルがこっそり持ってきたヤツ。」


 その表情は、なんだか少し、くすぐったそうだった。


「ハルが、俺のことどうにかして笑わせようってしてるのも、知ってる。」


 あれこれ試してくるハルトを思い出したのか、ノアはふっと笑った。


「ホントは、今日ミヤに教えた店、全部ハルから聞いたんだ。」

「そう、だったんだ。」

「うん。ハルには、今度一緒に行こうって言われてたんだけど、先にミヤと行っちゃって、怒るかもしんない。」


 それは悪いことをしたかもなあと、ミヤコも表情を緩めた。

「なんで俺に黙って先に二人で行っちゃうの!」と言って拗ねる、ハルトの姿が安易に想像できたからまたおかしかった。